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おもちゃで復活(7月2日)

おもちゃで復活、職人技生かす

 

 長引く不況と安価な海外製品に押されて、倒産の危機にまで追い込まれた静岡市の小さな靴底メーカーが、おもちゃの開発で復活しました。設備や材料を一切変えずに、職人の技で製作した新ジャンルの商品は、評判を呼び、海外進出も検討しているのです。

 サンダルやスニーカーの底を作っている「桑原(あきら)商店」。靴底メーカーで技術を磨いた桑原嗣社長(69)が、1981年に創業した従業員15人の企業です。靴底一筋だった桑原社長が新製品開発を始めたのは10年前。生産拠点を中国に奪われ、日本の靴産業全体が停滞していました。会社の売上高も激減。「倒産」の2文字がちらついていました。

 

「履物と関係ない独自の商品が欲しい」。本業の傍ら、靴底用のスポンジ素材「EVA」を思いつくままに加工しました。ドアストッパー、コースター、ガーデニング用のれんが・・・。その数20種類以上。毎日ホームセンターや施設を回って売り込み、作っては展示会に出し続けました。でも、反応は鈍かったそうです。

行きづまった04年、「EVA」素材の持ち味に目を向けました。環境ホルモンを含まず、弾力性がある。色も多彩で鮮やか。「子供向けのおもちゃが作れないか」。精神医学博士の助言を受けながら改良し、「脳(Brain)と身体(Body)に優しい」というBブロックを作りました。

 靴底用のスポンジ素材をそのまま活用した「Bブロック」。2008年度のグッドデザイン賞に選ばれると、売上は前年の4に伸びました。今では社の年間売り上げの4割を占め、靴底の売上を逆転するのは時間の問題です。

 

 丸みを帯びたスポンジ素材に14つの丸い突起が付いたBブロックは、組み合わせて家や自動車などを作ることができる玩具。プラスチック玩具と比べて手触りが温かく、一つのブロックが子供の手より大きいので誤飲の心配もないのが人気の理由だ。12ブロック入り3950円と安くはないですが、「安心だから」と選ぶ親は多いようです。

 

 グッドデザイン賞の選考では「きれいな曲線が精度をもって削り出されている」という職人芸が評価されました。桑原社長は「長年培った技術が別の形になって評価された」と苦労を振り返ります。商品は全国のデパートに出回ると同時に、保育園などで採用されています。3年ほど前から玩具に取り入れている、ともえ保育園(静岡市葵区)の八木静雄園長は「材質が柔らかく、角もないのでぶつかっても大丈夫。安心して遊ばせられる」と話しています。 6月1日朝日新聞夕刊号)