人は常に、科学が証明できない精神世界を、宇宙に託してきました。
年の瀬も押し迫った12月25日、京都市伏見区の真言宗醍醐派総本山・醍醐寺で宇宙の安寧と平和を祈る「宇宙法要」が行われました。
厳かな雰囲気の中、僧侶たちは約30分間、読経などを行いました。
醍醐寺の「宇宙法要」は昨年2月に初めて行われ、これが11回目。
実は、寺は2023年末、宇宙での寺院の建立を目指しています。
と、聞くと驚きますが、実際に宇宙空間に建物を建設するわけではありません。
京都市の衛星開発のベンチャー企業「テラスペース」と連携し、寺の機能を備えた人工衛星を「宇宙寺院」として打ち上げる計画です。
人工衛星は高さ30㌢、横20㌢、奥行き10㌢の箱型。
高度400~500㌔㍍の地球低軌道を、1時間半ほどかけて周回します。
内部には宇宙の真理を表す大日如来像や曼荼羅をまつります。
地上からはスマートフォンで衛星の位置を確認して祈りをささげられます。
打上げ後、5~10年で大気圏で燃え尽き、「本当に宇宙の一部になる」とそうです。
先月の宇宙法要の会場には、「宇宙寺院」の実物大模型が置かれていました。
寺院の名称は「劫蘊寺(ごううんじ)」。
住職を務める醍醐寺統括本部長の仲田順英さん(57)は「『劫』は宇宙が出来て終わるまでという長い時間、『蘊』は人間の存在を表す言葉です。宗教、宗派を超えた宇宙という視点からお寺をつくりたいという思いがありました」と説明します。
醍醐寺は、平安時代の874年、空海の孫弟子にあたる聖宝(しょうぼう)が開いた真言密教の名刹。
1994年には世界遺産登録されました。
(読売1/11)